1章 イスタンブール 人の背に(2/3)






その晩はもうトルコ人と一緒に飲みに行っていた。


トルコ人は国民の9割がイスラム教徒だけど、政教分離が進んだせいか、
アルコールも解禁されてて、都会であれば問題なく手に入る。

もちろん飲まない人もいる。






歩いていたら話しかけられて少しお茶して、そのまま飲みに行った。


でも、最初の長期海外てことで相当警戒してたんだけどな。
なんか変な行動してないか…思いっきり疑ってかかってた。

チャイ(紅茶)に睡眠薬を入れないか、仲間が周りを囲ってこないか・・・。
そんなんこわいもん・・・。


「飲みに行こう!おごってやるよ!友達がやってる店があるんだ!」


と言われると、もう断れなかった。
いや、断ったけど、なんか連れてかれた。




タクシーに乗って10分ほど。
タクシーの中での会話は、若干の緊張で焦ってしまった。

だって別に英語話せるわけでもないし、急にあの密室だぜ!!


オレそんなに仲良くない友達とかと一緒に電車で帰る時だってすごい焦るのに!!





そんなわけでひたすらビールを飲む。
もうこうなったら飲むしかない。

でも酔っ払ってどっかに連れてかれないようにしないと・・・。

ちなみにトルコの「エフェス」というビールはおいしいけど、なんだか若干薄いような気もしました。
好みの問題だと思いますが。




飲みながらくだらない話をしていたり、日が暗くなっていくうちに、軽く酔いも まわってきて、
なんだかオレも楽しくなってきた!





僕は普段タバコを吸わないんだけど、村上春樹のトルコ旅行記を読んだときに、
「トルコにはマルボロを持っていくと仲良くなれる」とあったので、一応持っていったんですね。



そしたら、本当にそうだった!


「タバコいる?」と聞かれたら、きちんともらって、お返しに日本のマルボロをあげる。という感じ。



というわけで、元々吸わない僕がこの日だけで一気に20本ほど吸ってしまい、
後に激しい頭痛がくるのはいうまでもない。









話が進んでいくと、



「日本行ったことあるぜ!いいとこだったよ!着物とか買って帰ってきたぜ!」

「日本にとっての着物みたいなものは、トルコにとってトルコ絨毯なんだぜ!」

「ちょうどすぐそこに、従兄弟がやってるトルコ絨毯屋があるんだ!行こうぜ!」


となった。




時すでに遅し。


なるほど・・・、噂の絨毯買わされるやつだったのか・・・。泣



もうここは突っぱねてやろうと心に決めながら、その従兄弟の店に連れていかれてく。

ちなみにこの店、実は日本のガイドブックにも載ってるという。



店先で飲んでいた店主や仲間達に会うと、すぐにまたそこで乾杯。



そして店の奥にある、商談スペースみたいなところに連れてかれ、靴を脱げと言われる。


いろんな絨毯に乗ってみたり、好きな色を聞かれたり、ボールペンで絨毯に穴をあけて
その穴を消してみたりと、いろいろアピールする店主。


そんな感じで30分もすると、いざ交渉ターイム!




「オレ、昔徳島で展示会兼販売会みたいのやったことあるんだぜ!」


「ふーん…、なんで徳島なん…」


「そん時はこの値段で買ってもらった。日本円でな!」


といわれ560000の数字が電卓にのっている。




ん!?




ん!?



56まんえん!?



「でも今回は特別だ!ブラザーが値段つけていいぜ!」



もちろんそんなお金はないし、なにしろ荷物になる。
だいたいそんな大きなものはこの旅に持ってけるはずはない。




「…じゃあ日本帰る時にもう一回来るからさ、今日は帰るわ!」



「ノー!!日本まで送ることもできるし、カードもOKだぜ!!」



そんな会話を何回繰り返したことか…。

あ゛ーーー、もうめんどくせーな!!!



トルコ絨毯はすごくいいものだし、伝統的なもので価値もあるし、
インテリアにあったらすごくリッチでオシャレだろう。



でも別に今いらない。





安い宿を探して、安く移動手段をとる。
そんなバックパッカーに、しかもまだ始まった時点で、
高級住宅のリビングのような絨毯を見せられても困る。





この時ちょっとイラッときてた。




いや、結構イラッときてた。






というわけで、さっきの560000円の絨毯。


オレが値段をつけていいといわれた。


というわけでこんちくしょー!と思いながら3000円と打った。



酔いもあって大きく出てやった!

さすがにこれなら向こうも諦めて返してくれるだろ!!




「HAHAHA−!!!これじゃなきゃオレは買わないぜブラザー!」


「・・・・・・正気か、ブラザー・・・!」


「正気さブラザー!だから金ないつってんだろ!このハゲ!!」



「なるほどな!やるじゃねえか!いいジョークだなブラザー!」

「もーー!悪いジョークだぜブラザー!」





ああああああ、もうめんどくせえなあ。





最終的に、
「君は友達だし、トルコ絨毯もすごくいいものだと思う。
でも今のオレにいらないものだ。もう勘弁してくれ…。」


と大人な対応をしながら突っぱねたら、なんとか帰してくれた。






そして帰りにタクシーを捕まえてもらい、
タクシーと交渉して金払っといてやるからと言われ、

めんどくさくなった僕は金を渡してしまい、
余分に金を取られていたことは言うまでもない。










でも相当ビールおごってもらったからなこの野郎ー!!


たぶん元はとってるからなこの野郎ーーー!!



うがぁーーーちくしょーーーーーーー!!!








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